離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
ぐっと永嗣さんの表情が歪んだ。
私はそれを信じられないものを見る感情で見つめていた──だってそれは、恐怖だったから。狂おしいほどの感情が、彼の整った眉目に浮かんでいた。……もう、言葉なんかいらないくらいに。
私はこんなときなのに、胸がいっぱいになる。それは涙となって溢れ出て、ぼたぼたと床に落ちていく。それなのに枯れない感情。彼が愛おしくてたまらない。
いま、死ぬかもしれないのに。
「永嗣さん」
私は笑う。
もし今死ぬとしたら、笑顔を覚えておいて欲しかった。泣き顔でも、苦しむ顔でもなく、ただひたすら真っ直ぐに、彼を想う表情を。