離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
すっ、と息を吸って、吐いて。
でもいま正直にならなきゃ、いつなるの?
彼は最愛だと言ってくれた。
逃げないって、決めたじゃない。
だから私は口を開く。
「私、弱い私と、さよならしたいです」
黙って永嗣さんは、私の言葉を聞いてくれる。
「最初は──あなたと離れて、ひとりで立つために強くなりたいと思いました。でも、今は違います」
永嗣さんの目を、まっすぐ見つめる。
「あなたの横で、堂々と立っていたい」
永嗣さんが、そっと私の頬を撫でる。
「ずっと、永嗣さんのことが──好きでした」
彼は目を瞠って。
そうして涙でいっぱいの目を、ゆっくりと細めた。私は思い切り背伸びをして、彼の頬に口つける。
涙の味──永嗣さんが私の頬も撫でる。私だって負けないくらいに泣いていて、その涙も永嗣さんがキスで拭ってくれた。
「きみは強い」
永嗣さんは言ってくれる。
「あんなふうに笑えるきみが、弱いわけないだろ」
「……そうでしょうか」
「そうだ。──覚えてるか? 交番にいた時、風香は一度会いに来てくれたよな。お礼を言いに──あの時、きみ、笑ったんだ。辛くて怖くて仕方ないだろうに、笑ってくれたんだ。俺はその強さに、惹かれたんだと思う」
お互いのおでこをこつんとつけて、鼻と鼻との距離で見つめ合う。
「だからこそ、守りたいと思った」
永嗣さんがそう言って、私の唇にキスを落とす──
私は、なんだかやっと、夫婦になったような──そんな気がしていたのだった。