離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
「けれどお色直しには『夫の色に染まる』という意味があるらしいから──いざ目の前にすると、胸がいっぱいになって」
「……永嗣さんも、かっこいいです」
儀礼服、と彼を見上げる。
紺の制服に、金の飾り緒、白い手袋──
「三割り増しくらいにはなっているか?」
「もっともっとです」
「ひどいな、普段はそうでもないのか」
「ふふ、違いますよ。いつもかっこいいです」
ちゅ、ちゅ、と永嗣さんからキスが落ちてくる。頬やこめかみへ、お化粧を崩さないくらいに……と。
近くに置いてあったベビーベッドで、もぞもぞと動く気配。
「あ」
目線をやると、ベッドの柵の隙間から、可愛らしいまん丸の瞳と目が合った。それはすぐに「ふにゃぁあ」という泣き声とともに歪んで涙をこぼす。
「はいはい、ごめんね抱っこだね」
「俺がいく」
永嗣さんがいそいそとベビーベッドから抱き上げたのは、もうすぐ一歳半になる娘の柚香だった。私のウエディングドレスとちょっとだけ似たデザインの赤ちゃん用ドレスを着て、不機嫌そうに泣き続けている。