妄想腐女子の恋愛事情  倉橋琴音と影山海里
「はい」
履歴書を手渡すと、
指示された生徒用椅子に、
琴音は座った。

「トイレ掃除はできる?」
開口一番に聞かれた。

「え?・・・はい」

男は履歴書を眺めながら、続けた。
「このフロアの男女別のトイレね。生徒が使うから。
あと、教室清掃もある」

「教材とか、電話対応とか、
物品の管理とか補充も、
トイレットペーパーは重要だ」

トイレットペーパーで、
よほどの問題があったのか、
男は、過去の出来事を思い出す
ように、目を天井に向けた。

「事務員は君一人だ。
前のおばちゃんが、腰を悪くして辞めてね。
俺一人で困っていたのだが」

そう言って、
その男は、初めて琴音と視線を
合わせた。

「明日から頼むわ、
以上、面接は終了」

「はぃ・・?」
琴音は戸惑いを、隠せなかった。

この香山教授(激似)男は、
相当マイペースらしい。
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