妄想腐女子の恋愛事情 倉橋琴音と影山海里
琴音の妄想・その2
<琴音の妄想>
トキは、香山教授の研究室に
呼ばれていた。
「新しい、リモートの実験を
始めたい」
香山教授は書類に目を落としたままで、トキに視線を向けない。
僕は実験動物だから・・・
トキはうつむいている。
「ここで待っていなさい、
準備ができているか、確認してくるから」
香山教授は書類から顔を上げて、
トキの顔を見た。
トキには、拒否権なしだ。
バタン
白衣を翻して、
大股で教授は、出て行った。
トキは窓辺に歩いて行った。
窓を開けて、新鮮な空気に
包まれたいと思ったからだ。
人工的な空調は、息がつまりそうになる。
窓は、教授のデスクの横にある。
トキの腰が、トンとデスクの角に当たった。
乱雑に積み重ねられた書類の一部に触れて、
バサバサと、それらが床に散らばった。
書類の間に、教授の携帯だろう。
それも一緒に、床に落ちた。
トキは急いで、書類をかき集め、
それから携帯を拾った時だった。