妄想腐女子の恋愛事情  倉橋琴音と影山海里
琴音は顔を上げて、
横目で夜の授業をしている、
景山海里を見た。

香山教授が、実写版なら、
この景山海里という男は、
見た目だけなら、<どはまり>だ。

あごから、喉ぼとけのライン、
そして、マーカーを持つ、
やや節くれだった大き目の手

低めのよく通る声、
長めの前髪を、かきあげるしぐさ・・
長身で痩躯、

横顔が、ギリシア彫刻のように
端麗だ。
中身は相当に違うが・・・・

その日
琴音は夕飯用にお弁当を作って、
事務机で、包みを広げていた。

景山先生は、いつもの缶コーヒーとカップラーメンだ。

それを見ながら、
琴音の妄想は、スイッチオンに
なっていた。

香山教授は、何を食べるのか。
コーヒー、それもブラックだ。

カフェイン中毒に、なるほど飲むだろう。
あとは・・何が好き・・・?

その香山教授(激似)の景山先生が、休み時間に言った。

「その弁当とカップラーメン、
交換してくれないかな?」

「はい?」
一瞬、琴音は、景山が何を言っているのか、理解できなかった。

これって、運動部の男子高校生の発言ではないか?

琴音が、首をひねっていると、

「あーーー、カップラーメンじゃ安すぎるか。
俺、その弁当、買うから。
1000円でいい?」

景山先生は、少しふてくされぎみだが、
照れ隠しでもあるのだろう。

視線が、琴音の弁当の包みに、
向かっている。

「別にいいですよ。
おかずは、冷凍食品ばっかり
ですけど」

琴音は思わず笑ってしまった。

「電子レンジで温められるといいんだけど」

「上にはあるけど・・」

景山先生は少し言いよどんだが、
先を続けた。
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