妄想腐女子の恋愛事情  倉橋琴音と影山海里
「悪い、吸わせてくれ。」

ライターで火をつけると、
ほわっと煙を吐いた。

「君の話を聞きたい。
ああ、この延長の時給分は
支払う」

ばれちまったものは、
しかたがない。

琴音は三十路で、はじらう乙女ではない。
ある部分で、おばちゃんスキルもある。

仕事の合間に、BL本を読みふけっていたのは、まずかったが・・・

「私がこの道に入ったのは・・・」

この言い方は、
まるで禁断の場所に、入りこんだようではないか。

琴音は、BL本をトンとそろえるようにして、積み重ねた。

景山の顔を見ずに、窓の外を
眺めて口を開いた。

街路灯には、
小さな虫がたくさん
吸い寄せられているのが見えた。
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