妄想腐女子の恋愛事情  倉橋琴音と影山海里


その日、琴音がカルチャースクールから、退勤できたのは
10時30分だった。

一部屋、鍵が壊れて閉まらず、
警備会社に引き継ぐまで、
待機があったのだ。

ようやく、事務処理と引継ぎが終わると、
ビルの通用口から外に出た。

「さぶっ・・!」

琴音はコートの前を、急いでかき合わせた。

雑居ビルが、肩をぶつけるように立ち並んでいる中で・・・

切り取られた空を見上げると、
大きな満月が浮かんでいる。

秋の終わり、冬の訪れを告げる、
澄み切った夜空に浮かぶ月。

その中で、あるビルの3階の窓に、明かりが煌々とついている。

そこはどうやら学習塾のようだ。

生徒募集の張り紙と、
事務員募集(パート・短期)の
張り紙が、並んで貼ってある。

事務員募集(パート・短期)

小さな個人塾のように見える。
< 7 / 67 >

この作品をシェア

pagetop