魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
……きた。

待ってましたと言わんばかりに、あたしは視線を下げた。



「……どうした?」



肩を震わせて泣いたふりをする。嘘泣きは得意。

この涙で、今まで何人も騙してきた。

あたしは演技がうまいから、みんなすぐに騙されてくれる。

声をかすれさせながらお姉ちゃんにいじめられてるのと言えば、みんながあたしを哀れんだ。

あの虫も殺せないような女が……あたしをいじめているって、簡単に信じてくれる。



「実は……今日は、白神様とふたりでお話ししたかったんです。……姉の噂は、白神様の耳に入っていませんか?」

「いや、何も知らない」



そうだろうなと思ったわ。

まあ、婚約者の悪口なんて、ルイス様の前でやすやすとは言えないでしょうね。

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