魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
『あなたは、優しい方ですね』

『え?』

『ブランであなたみたいな人、初めて見ました! ブランだけじゃないです!』



ラフの言葉に、困ったように笑った女。



『ありがとうございます』



その笑顔が……ずいぶん悲しそうに見えた。

感じたことのない、胸の痛みに襲われる。

どうしてこんな顔をするんだ、この女は。

泣きそうな顔をする女にも、そしてそれを見て苦しんでいる自分自身にも戸惑う。


『着きました……! この門を越えればノワール学級です!』

『ありがとうございます……! 助かりました……!』

『いいえ、早くご主人さんに会って、怪我を治してもらってくださいね』

『はい! ありがとうございます、心優しいべっぴんさん!』



最後に見えた、女の笑顔。

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