魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
『名前……! 聞き忘れました……!!』



ラフもそこまでは見ていなかったのか、情報が得られなかったことに内心肩を落とす。



「……どうしたんですか? あいつって……夜明が誰かに興味を持つなんて、珍しいですね」



いかなる時も澄ました態度を崩さない竜牙が、珍しく取り乱している。

幼い頃から俺のことを知っているこいつだからこそ、俺が他人の名前を知ろうとしたことに対して驚きを隠せないらしい。

俺自身、驚いている。

今まで人にも、物に対しても……興味を持ったことはない。それなのに、今はあの女の笑顔が、頭から離れない。



「べっぴんさんって言ってました……女子生徒ですか?」

「……」

「まさか……ついに、気になる人間が?」



気になる……のか、これは。

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