魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
【Ⅱ】寵愛の幕開け
フードさん
「お前……名前は?」
この人は……誰?
悪い人ではないのかもしれないけど、顔が見えないから恐怖心を抱いてしまう。
名乗っても、いいのかな……。
不安を感じたけれど、怪しい人が私に近づいてくる理由がない。
お金も持っていないし、私に利用価値はない。だから、名前を聞かれてそれを無視する理由もなかった。
「双葉、鈴蘭です」
そう正直に答えたけど、彼は黙ったまま。
ただじいっと私を見たまま動かない。
こちらから顔は見えないけど、見られていることだけはわかるから、気まずさを感じて視線を伏せた。
『べっぴんさん!!』
え……?
この声は……!