魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
鈴蘭
【side 夜明】
俺の日常はつまらない。
何かに興味を持つことや、心が踊るような出来事もなかった。
だが……今日だけは違う。
朝、目が覚めてからずっと、この時を待ちわびていた。
昨日と同じ時刻。俺はブランのあの女に会うため、支度を進める。
ようやく会いに行ける。今日もあの場所にいるとは限らないが……会えるかもしれないと思うだけで、心臓が高ぶっていた。
どうして俺はこんなにも浮かれている?
わからない……ただ、一刻も早くあいつに会いたい。
『……ご主人、大変申し上げにくいですが、その格好だと不審者に間違われてしまいますよ』
ラフが、こほんと咳払いをするふりをした。
「下手な格好をするより、まだシンプルなほうがいい」
使用人に用意させた、質素な服装。黒のパーカーとスウェットという組み合わせだった。
このような洋服を着るのは初めてで、新鮮だった。
楽だな……寮の中であれば、こういう格好もありかもしれない。