魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
【Ⅰ】運命の出会い
いらない子
「何よこれ! ガラスが曇ってるじゃない!!」
お母さんの大きな声と、グラスが割れる音がリビングに響いた。
私はその場に座り込んで、深く頭を下げた。
「ごめんなさい、お母さん……」
「この子は洗い物ひとつできないのかしら……情けないわ」
お母さんは呆れながら、ため息をついている。
割れてしまったガラスの破片を見ながら、胸が痛んだ。
綺麗なグラスだったのに……私がきちんと洗わなかったせいで……。
「お母さん、大丈夫? お母さんの手が切れたら危ないから、片付けはお姉ちゃんにさせよう」
妹の星蘭が、お母さんに寄り添いその手を握った。
星蘭のその言葉でお母さんの機嫌がみるみるうちに直っていく。
「星蘭は鈴蘭と違っていい子ね。自慢の娘よ」
そう言って、お母さんは再び私に視線を向けた。
星蘭に向ける慈しむような眼差しとは対照的な……嫌悪に満ちた瞳で。