魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
可愛いなんて言葉は、生まれてこの方使ったことがないというのに、頭の中がその感情で埋め尽くされていた。






その後のことは、よく覚えていない。

鈴蘭に見惚れ、我に返っては誤魔化すように適当な質問を投げつけては、また見惚れて……その繰り返しだった。



「そろそろお昼休み、終わりますね……」



もうそんな時間か……?

時計を見れば、昼休みが終わる10分前になろうとしていた。

鈴蘭と会ってから、まだそれほど経っていない感覚だったというのに。

これほど時間が過ぎるのが早く感じるのは初めてだ。

もう、行ってしまうのか……。

そう思うと、焦燥感に襲われる。



「それで、礼は?」



とにかく、今日の目的を果たそう。

そう思い再度問いかければ、鈴蘭は首を横に振った。


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