魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
「もう十分です」
「ん?」
十分?
意味がわからず鈴蘭を見つめると、俺を見て……再び愛らしい笑みを浮かべる。
「お昼休みを一緒に過ごしてくれて、ありがとうございました」
……は?
過ごした時間が礼だと言わんばかりの鈴蘭の発言に、呆気にとられた。
たった少し話しただけで礼を言うなんて、わけがわからない。
それに……この時間に価値を感じたのは、俺のほうだ。
鈴蘭と過ごす時間が、過ぎ去ってほしくないと思った。今も、教室へ戻ろうとしているこいつを引き止めてしまいたい。
「お前……」
引きとめようとした俺の言葉を遮るように、チャイムの音が鳴り響いた。
「あっ……授業が始まるので、失礼します……!」
慌てた様子で立ち上がり、頭を下げた鈴蘭。