魔王子さま、ご執心!① ~捨てられ少女は、極上の男に溺愛される~
だけど……私があげられるのは、そのくらいしか思いつかない……。

それに、フードさんなら……喜んでくれるかもしれないと思った。

よし……帰ったら、作ってみよう。

せめて、フードさんへの感謝が少しでも伝わればいいな……。

そんなことを思って、笑顔がこぼれた時だった。



「……ずいぶん機嫌がいいな」



もうすぐ裏庭に着くという廊下で、聞こえるはずのない声がした。

この声……聞き間違えるはずがない。

ルイス、さん……?

ぴたりと、走っていた足が止まる。

怖くて、振り返ることができなかった。



「こんなところでどうした? 男に会いに行くのか?」

「え……」



低いルイスさんの声は、婚約していた時とは別人のようなものだった。

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