婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
だけどすぐに自分の考えの甘さを思い知らされる。侯爵家で大事に育てられてきた私が井戸の使い方など習うわけもなく、桶を持ったまま私は途方に暮れてしまっていた。
いくら聖女ではなかった娘だからと言っても、身の回りの世話はしてもらえていたのだから。
それでもこのまま諦めるわけにもいかず、何度も挑戦してなんとか桶一杯の水を汲むことが出来た。これからは全部自分でやらなければいけないのだと言い聞かせ、必死でシーツを洗い錆びた鉄の棒へと干した。
それだけでクタクタになり先ほどの部屋へと戻る。
動いたせいか空腹を感じ、御者が渡してくれたパンと干した果物を取り出して口に入れたが味もろくに感じない。この食糧だってすぐに無くなる、これからどう調達すればいいのかも分からない。
……不安な気持ちのまま時間だけが過ぎていく。父も母もこうなることが分かっていて何も言ってはくれなかった。アンネマリーやカールを説得してくれる事もなく、あっさりと見放されたのだ。
「聖女ってなに……?」
アンネマリーが聖女でなければ私の未来はこうではなかったのかもしれない。考えても仕方ないことばかりが思い浮かんで、涙が滲んでくる。
結局夕方になり、干したシーツを取り込む時間まで私は情けなく泣いてばかりいたのだった。
辺境地の夜はずいぶんと冷えて、簡単に食事を済ませて私は早々とベッドに潜り込んだ。疲れてグッスリ眠ってしまった所為か、屋敷に入り込む誰かの足音にさえ全く気付かないままで。