婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
眠り続ける刺客とは?
―Side レオンハルト―
「……はあ、またか」
汚れた身体を湯で流し、いつものようにさっさと眠ろうと部屋に入った瞬間溜息が出る。この屋敷に人が入った事には何となく気付いていた、これが初めてではなかったから。
さほど荒らされた形跡も無かったし、まあいいかとそのまま風呂に入っていたのが良くなかったのか。ベッドの上の膨らみを見てげんなりとした気持ちになる。
色仕掛けなんてものがまだ通じると思っているのか、俺がこの部屋に入ってきた事は気付いているはずなのにベッドの上からソイツは微動だにしない。
しかし父も兄もいい加減にして欲しい、いくら俺の存在が邪魔だからと言って数日に一回はこうして刺客を差し向けてくる。もううんざりだ。
さっさと追い出して眠ろうと、ベッドまで大股で歩きそのまま膨らみからシーツを剥ぎ取ってやった。さあ、出てくるのは剣か、それとも? なんてくだらない事を考えながら。
「……は?」
相当マヌケな声が出たと思う。それくらいベッドの上にいた人物は俺の予想を裏切っていたのだから。
シーツを奪われて寒かったのか、ムニャムニャと何かを呟きながらソイツは眉間にしわを寄せている。ただ眠っているにもかかわらず、その表情は幼い少女の様にあどけなくとても俺を殺しに来た刺客には見えない。