婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです！

「それは俺の台詞だな、お前こそこんな辺境地までわざわざ何しに来た？　どうせ父か兄の差し金なんだろう、早めに白状した方が身のためだぞ？」

　身体を離した途端、態度を豹変させた男性が私の手首を掴んでくる。その力の強さに私は思わず顔を顰めててしまった。
　侯爵令嬢という身の上で蝶よ花よと育てられてきた私は、カールハインツ以外の男性と関わることは少なかった。婚約者であったカールも最初は優しかったし、冷たくされてもこんな乱暴な事をされた経験は無い。

「い、痛いわ。離してよ……」

「お前が俺の質問にきちんと答えることが出来たならな」

　お前なんて、そんな呼ばれ方をしたこともほとんど無い。ずいぶん粗野な男性みたいに見えて、抵抗するのが怖くなり大人しく自分の事を話し始める。

「私は……シャルロッテ・ファーレンハイト。ここには療養の予定で来たんです、それ以外に何か聞きたいことはありますか？」

「ファーレンハイト？　侯爵家の令嬢がなぜこんな場所で療養をする必要がある、つくならもっとマシな嘘をついたらどうなんだ」

　マシな嘘と言われても、これが事実なのだからしょうがない。役に立たない上、婚約破棄までされた私はもう侯爵令嬢と言える立場ではないのかもしれないけれど。

「嘘はついていません。私はシャルロッテ・ファーレンハイトです」

　そう名乗れば名乗るほどに惨めな気持ちになる、本当にここにいるのが私なのかも分からなくなりそうで。