婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
少しだけ迷った様子を見せたレーヴェだったが、その手に持った根菜を渡すとその皮の剥きかたを説明してくれた。小さな刃物すらまともに持ったことのない私には、それでも難しい作業だったけれどすべての野菜の皮を剥き終わったときはとても嬉しかった。
良くやったな、と私を子供みたいに褒めてくれるレーヴェ。そのくすぐったさがなんだか懐かしくもあった。
「あとは煮えるのを待つだけだ、今のうちにパンも切っておこう。ロッテはチーズは好きか?」
「好き! 私、子供の頃からチーズが大好きなの」
空腹だったこともあり、好物のチーズの話をされてつい目を輝かせてしまった。そんな私の様子を見てレーヴェは笑いを堪えながら奥の棚からチーズの塊を取り出してきた。
「パンにのせて少し火で炙ろう、そうした方が俺は好きなんだ」
「美味しそう……」
今まで裕福な家庭に育ち、特別に用意された食事をしてきたのに……いま、目の前でレーヴェが作ってくれている料理の方が何倍も美味しそうに見えた。
いつの間にか家族の食事にはアンネマリーだけが呼ばれるようになった。気が付けばあの広い食堂で私は一人で食事をとるようになってしまって。いつの間にか料理の味もろくに感じなくなっていた。
……それなのに、今日会ったばかりのレーヴェとこうして食事の準備をするのがとても楽しい。