婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「随分楽しそうだな? こんなの、侯爵令嬢のすることじゃないとは思わないのか」
真剣に根菜の皮を剥いたり、チーズを出されて子供のように喜ぶ私をレーヴェは少し不思議そうに見ていた。
確かに普通の貴族の令嬢が食事の支度などを喜んでするとは考えにくい。少なくとも私だって、そういうことは使用人の仕事だとずっと思っていたのだから。
でも誰もいなければ自分がするしかない、私は今はそんな環境に置かれてるのだと気がついたから。
「楽しいかと聞かれると微妙かもしれない、何もかも初めてでそんな事を考える余裕はないもの」
「そうか。そうだな……」
レーヴェからすれば随分甘ったれた事を言うと思われてるかもしれない。でも何をするにも必死にならないと、不器用な私は失敗ばかりしてしまうから。
だけど……
「そうね。でもファーレンハイトの屋敷にいた頃とは全然違う、何だか少しワクワクしてる」
「意外と図太い神経してるんだな。まあ、そうじゃなきゃこんな廃墟みたいな場所で一人でグースカ寝てないか」
レーヴェは一瞬だけ驚いた表情を見せたけど、すぐに私を茶化して笑いだしてしまう。意地悪なことを言うときほど、彼が生き生きして見えるのは絶対間違いじゃないはず。
ムッとしてレーヴェを睨み付けても、彼はすぐに煮込んでいた鍋の中身を確認するため視線をそらしてしまった。何だか彼の良いようにからかわれてしまった気分だった。