婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!


「その皿をそっちのテーブルに運んでくれ、パンが用意出来たら俺も行くから好きな席に座っているといい」
「分かったわ」

 ほとんどの部屋が使えないような状態なのに、台所と食堂の一部はわりと綺麗に片付けてある。そう大きくない古い木のテーブルに皿を並べると、どの席がレーヴェの普段座っている場所かと考える。テーブルに椅子は四脚、その中の一つだけ布地が薄くなっているのを見つけここがレーヴェの普段座っている席だと気づいた。
 
「どうしようかしら……」

 ファーレンハルトの屋敷では一人で食事をすることばかりで、誰かと一緒の食卓は久しぶりだった。そんなこともありどの席に座ればいいのか、正直迷ってしまって。
 テーブルの回りをこっちかそっちかとウロウロしていると、そんな私の後頭部にコツンと何かがぶつかった。

「何をしてるんだ? 座って待ってるように言っただろう?」
「あ、レーヴェ……」

  どの席に座ればいいのかわからない、何て言えず視線をさ迷わせていると彼はすぐに一つの椅子をひいて私にそこに座るように促した。
 そこはレーヴェの席の対面。私を席に着かせた後で、自分の椅子に座った彼がまっすぐにこっちを見ている。目の前のテーブルには先程レーヴェが言っていたこんがりとろけたチーズののったパン、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

「……なに? 私の顔に何かついているの?」
「ああ、口からダラダラと涎が出てる。そんな風に遠慮してないでさっさと食べろ」


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