婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「……ロッテ?」
いつの間にか食事の手が止まっていたらしく、レーヴェの声で彼女はハッと我にかえった。ずっと一人で過ごしてきて、人との関わりをあまり持てなかったロッテ。そんな彼女にとってレーヴェと二人きりの空間、それは特別な心地よさを感じるものだった。
「そうよね、別荘に行けばきっと私も……」
明るく振る舞わなければならないとは思いつつも、どうしてもそうすることが出来ない。そんなロッテを見て、レーヴェは少し思案した表情をした後また食事を再開した。
ロッテはそんな迷いに気づきながらも、無理矢理にワケを聞き出そうとしないレーヴェの優しさに胸が温かくなるのを感じていた。
「どうしたものか……」
浴室に水を張って、魔法石で丁度良い温度に沸かす。この国では魔法石は大変高価な代物で、王族や貴族が主に使用する。ゼーフェリング王国から遠く離れた妖精の国で作られるという魔法石は、美しく輝き色によってその効果が違ってくるのである。
水が湯に変わっていく様子をぼんやりと見つめながら、レーヴェは深いタメ息をついた。もちろんその悩みの原因はロッテのことなのだろう。
「……ファーレンハルト侯爵令嬢、か。一度調べてみる必要がありそうだな」
「……」
レーヴェの呟きに、静かに頷いた影が霞のように消える。それを確認した後、彼は浴室を出て部屋で待つロッテのところへと戻った。