婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「昨日は湯も浴びれないまま眠ったんだろう? 風呂の準備をしておいたから、遠慮なく使うといい」
「え? でも……」
湯を浴びれるのは嬉しいが、他に人もいない廃墟のような屋敷で男性と二人きり。そんな状況でのほほんと湯浴みなどして良いものだろうかとロッテは悩んだ。レーヴェのことを信用していないわけではない、だが侯爵家の令嬢として育てられたロッテはそれでいいのかと少し抵抗も感じていた。
そんなロッテの考えなどお見通しとでもいうように、レーヴェは小さな魔法石の嵌められた指輪を手渡してくる。
「この指輪には結界を張る効果がある、使用するには祈るだけでいい。これでダメなら……」
「待って、レーヴェ! これだけでいいわ、一つあれば十分だし貴方を信用してるから」
一つでは足りないならと、身に付けている装飾を外そうとするレーヴェをロッテは慌てて止めた。傭兵のような格好をしていると思っていたが、よく見れば彼の着ている服や飾りは安物ではないようだ。
……ますます、ロッテはレーヴェのことがわからなくなる。彼がいったい何者なのか、ぼんやりと見上げていると額を大きな手のひらで軽く叩かれる。
「ボーっとしてないで、さっさと湯を浴びてこい。せっかく温めたのに冷えてしまうだろうが」
「え、あ……わかったわ、ありがとう」
言葉遣いは少々乱暴で粗野だが、レーヴェはロッテのことを気遣ってくれている。その優しさにくすぐったさを感じながら、ロッテは着替えを持って浴室へと向かった。