婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
ロッテが湯浴みをして部屋に戻るとレーヴェは真剣な表情をして窓の外を見つめている。何かあったのだろうかと思い、彼女はレーヴェの近くに寄った。
「どうかしたの? そんな怖い顔で外を眺めて」
「……いや、さっきから雨が降ってきたからな。今日は山を越えるのには向かなそうだと。別荘に送るのは明日以降になるが、それでも構わないか?」
その言葉にロッテは少しだけホッとした。彼がすぐにでも自分を別荘に送ろうとしてくれているのはわかっているが、それでももう少しレーヴェと一緒に痛いと思っていたから。
嬉しさを表情に出さないよう気を付けながら「大丈夫、気にしないで」と、ロッテは答え同じように窓から外を眺めた。
「……え? あれ……?」
「どうした、ロッテ」
何かが屋敷の草木の間を素早く横切ったような気がして、ロッテはもう一度その場所を凝視する。草木が少し揺れているが、それが何かのせいなのか雨のせいなのか見分けがつかない。
こんな辺境地のオンボロ屋敷に誰かが迷い混むとは考えにくいが、自分のような例もある。そう思ってロッテはレーヴェに気になったことを素直に話す。
「その、人影のようなものがあの辺を横切ったような気がして……」
「……気のせいだろう、ロッテが来るまでここには人なんて寄り付きもしなかった。心配は無用だ」
「そうなのね、ならいいんだけど」
レーヴェに気のせいだと言われ、ロッテはもう気にしないことにした。窓から離れる彼女を確認した後レーヴェが窓の外を睨んでいることに気付かないままで。