婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!


 いつからか、ロッテはあの屋敷で侯爵令嬢として扱われない存在になっていた。始めからそうだったわけではない、妹のアンネマリーが聖女の力を顕現させたあの日から。徐々に……ゆっくりとだが聖女でなかったロッテの扱いが変化していった。
 婚約者だったはずのカールハインツが余所余所しくなり、いつの間にかロッテよりもアンネマリーの傍にいる時間が増えた。よく見せてくれていた笑顔、それもすべて彼女の妹に向けられるようになってしまう。
 二人の子を可愛がっていた父も、自然と注目されるアンネマリーの言うことばかりに耳を傾けるようになった。そんな家族の姿を見ていた使用人たちの態度も気付けば変化して、ロッテは広い屋敷で一人で過ごす時間が多くなる。

「確かに私は侯爵家の令嬢だけど、妹と違って聖女ではないのよ?」
「それがどうした、聖女であろうとなかろうとロッテを床に眠らせていい理由にはならない。もちろん周りの人間が君を蔑ろにしても良いという言い訳にもな」
「レーヴェ、あなた……」

 キッパリと言うレーヴェに逆にロッテの方が驚いてしまう。もしこれがファーレンハイトの屋敷の人々なら、ロッテが同じことを言っても気にもとめないだろう。
 ベッドが足りない場合は必ずアンネマリーが優先される、それが当然だったから。

 屋敷の人だけでなく国王や民衆もアンネマリーにしか興味がなく、いなくても同じだったロッテをレーヴェはあくまで侯爵令嬢として……そして一人の女性として扱ってくれるようだ。


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