婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
自分ではなく妹のアンネマリーが力を顕現させたことにショックを受けたのも事実だったが、それ以上にアンネマリーのロッテを見下すような眼差しが心に刺さった。
……ロッテに懐いていたはずの妹があからさまに敵意を剥きだしで、悪い夢でも見ている気分だった。
「ロッテがよくても俺は気に入らない。そんな周りの考えも、簡単に諦めた君自身も」
「簡単になんて……っ!」
レーヴェの言葉に一瞬だけ感情的になってしまうロッテ。それもそのはず、彼女だって聖女になるための努力をずっとしてきたのだ。簡単に諦めただなんて思われるのは心外だった。
他の誰から言われても黙って我慢してきたはずなのに、どうしてかレーヴェにだけはそう見られたくはない。
「そんな事ない、私だって簡単になんて諦められるわけないのに……」
「じゃあ、諦めなければいい」
ロッテが素直な気持ちをぶつければレーヴェはそんな彼女をわざと煽るような言い方をする。ロッテにはなぜ彼がそうやって自分に諦めさせないようにしようとするのかが分からない。
すでにゼーフェリング国に聖女は誕生した、もうロッテが聖女になる必要などないはずだ。それに……
「聖女は常に一人しか存在しないはず。アンネマリーが力を顕現したのだから、今さら私が聖女になんてなれるわけないわ」
少なくともこの国の歴史に一代に聖女が二人現れたという記録はない。それがファーレンハイトの血筋であろうとなかろうと。
それはゼーフェリング国の子供でも知っているようなことだ、いくら辺境地にいようと大人のレーヴェが知らないとは思えない。
「前例がなければ、君が聖女になって新しくそういう歴史を作ればいい。ロッテはそう思わないか?」
「……歴史を作る、って!?」