婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
ナーデランド辺境地はいくつもの山々に囲まれた場所である、そのため日が落ちるのもロッテが住んでいた王都よりもずっと早い。天候の悪さも手伝ってか、昨日よりも早く部屋の灯りをつけなければならなかった。
安い蝋で灯した灯りだけだが、同じ部屋にレーヴェがいると思えば不思議と不安は感じなかった。並べてあった本の中の一冊にロッテが興味を示すと、すぐに気付いて読んでいいと手に取り渡してくれる。
お互い無理になにかを話さなくても、居心地の悪さは感じない。それがとても不思議だとロッテは思っていた。
「もう少ししたら夕食の準備を始めようと思う、ロッテも手伝ってくれるか?」
「もちろん、教えてくれるのなら自分に出来ることはやりたいの。これからのためにもなるし」
いくらレーヴェがロッテに協力してくれると言っても、何も出来ないおんぶに抱っこの状態のままではいられない。聖女の力が顕現出来なくても、彼女だってレーヴェの役に立ちたいのだから。
ロッテのそんな前向きな様子を見て、レーヴェは少しホッとした。昼間に言ったことで彼女が無理をしていないか、それが不安でもあったから。それと同時にロッテを利用しているような気もして、胸の奥にモヤモヤした思いを抱えてもいたのだが。
「じゃあキッチンに移動しましょうか、灯りは私が――え?」
ロッテがランタンを手に取ろうとした瞬間、ヒュッとどこからともなく風が吹いた気がした。その風のせいでランタンの火が消え、あっという間に彼女の視界は闇に包まれる。
「ロッテ! いいか、そこから動くなよ!」
「レーヴェ!?」