婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!


 突然訪れた暗闇とレーヴェの強い口調に、何か良くないことが起こったのだとロッテは判断する。少し前まで聖女になるための教育を受けていたため、自分の身を守る術を習っていたのは運が良かったのかもしれない。
 レーヴェの言う通り無駄に動いたりせず、気配を殺して周りの様子を慎重に確認していく。わりと夜目が利くのもここで役に立ったようだ。

 侵入してきたのが野生の動物ならば、一旦捕獲した後に山に帰せばいいだけのことだが多分そうではない気がする。なぜならロッテから少し離れた場所で剣に手をかけるレーヴェが殺気を隠そうともしていないからだ。
 そんな彼に気圧されているのか、侵入者は物陰に身を潜めなかなか姿を現さない。その様子を黙って見守ることしか出来ない、ロッテはそんな自分に苛立ちを感じていた。

「ふん、実力差を感じてまともに戦うことも出来ないのか? ずいぶんレベルの低い刺客を送ってきやがったな、それも予想通りだ」
「ふ、ふざけるなっ! たかがそこらの傭兵風情が、俺の仕事の邪魔をするなあ!」

 安い挑発にのって、レーヴェに向かって突撃する黒いマント。ロッテが焦って声を出す前にそのマントが一瞬で宙に浮き、そのまま床へと落ちていった。
 レーヴェが黒マントの男に何をしたのか、ロッテには全くわからなかった。

「口ほどにもないな、さあて……ここからは楽しいお話の時間だ。素直に話さなければどうなるか、分かってるよな?」

 火をつけ直したランタンの灯りをマントの男の顔に近付けると、レーヴェはまるで悪役のような笑みを浮かべて見せる。ロッテが見たことない残酷さを滲ませた彼の表情に、戸惑い声をかけられなくなる。


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