婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
少なくとも自分には刺客に狙われる理由など思いつかない。聖女ではなかったにしろファーレンハイト侯爵家の令嬢である彼女を、危険を冒してまでわざわざ暗殺する必要があるのか?
だが、レーヴェはこの刺客がロッテを狙ってきたと確信を持っているように見えた。
「この程度の暗殺者では俺は殺せない、俺を消したい奴らはそれをよく知っているからな。だとすれば、俺の存在を知らずコイツはここに送られてきたんだろう。つまり……ターゲットはロッテ、君のはずだ」
「そんな、どうして?」
レーヴェが誰かに狙われているというのも気になったが、今その話を聞こうとしても答えてはもらえないだろう。自分が狙われなければならないワケも分からず、ロッテは戸惑うしかなかった。
「それはこいつが教えてくれるだろう、これ以上痛い目も見たくないだろうからな。それとも、まだ足りないか?」
マント男を見下ろすレーヴェの瞳はゾッとするほど冷たく、これ以上の抵抗は許さないと暗に告げている。それは床に転がされた彼にも通じたようで。
「は、話す! 全部話すから、俺は……う、ぐっ⁉」
「おい、どうした!」
慌てて話始めようとした男が、喉を押さえて苦しみだす。手足を縛られたままなのに、床をのたうち回るその姿にロッテは恐怖さえ感じた。レーヴェが急いで男の身体を抑えロープを外した瞬間、男は口から大量の血を吐いた。
「ぐああああっ! がはっ、たすけて……!」
「しっかりしろ! 動かずに、ジッとしてるんだ」
止まらない吐血に男は狼狽え、必死にレーヴェの服を掴んでいる。この男を捕らえる際にレーヴェは傷一つつけてはいなかったはず。いったい何故……?
しかしのんびり考える暇も与えないという様に、刺客だった男の下にはあっという間に大きな血だまりが出来ていた。