婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「ダメ! このままじゃ死んでしまうわ」
「分かっている、だが……!」
レーヴェが何かしたわけではない、ならばどうして男は吐血しているのか? そんな彼の脳裏に浮かんだのは、この国では禁止されているはずの呪術だった。
もし依頼者を口にしようとした場合に発動されるように、最初からこの男に呪いがかけられていたのかもしれない、と。
このままでこの者の命は助からない、せめてロッテがそれを見ないで済むようにとレーヴェが彼女を部屋から追い出そうとすると……
「ダメ、死なないで! お願い」
「ロッテ……!?」
レーヴェの身体を押してロッテが身を乗り出すようにして男の手を握り声をかける。その必死な様子を見てレーヴェは彼女の行動を止めるのをやめた。これがこの男の最後だとしても、こうして誰かが傍にいてくれればなにか違うかもしれない。そうレーヴェが思った瞬間、ふわりと不思議な暖かさが彼らを包んだような気がした。
「……何だ、今の?」
一瞬で消えた不思議な感覚、それを確認しようとロッテを見れば彼女は先ほどと同じように俯きマントの男の手を強く握っている。気付かなかったのだろうか? そう思い彼女に声をかけようとした、その時――