婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!

「……分かった、今はそうやって言い合う時じゃない。とりあえずこの男のことが優先だ、話は後にしよう」
「そうね、私はどこかこの人を休ませる場所を探してくるわ」

 普段は声を荒げたりしないのに、レーヴェに対して大きな声を出したことが気まずくてロッテはなんとなくその場から離れた。もちろん男の事も心配だったが、今は冷静でいられる自信もなかった。

「私が……聖女? まさか、そんなはずないわ」

 レーヴェたちのいる部屋から離れた廊下で、ロッテは足を止めた。信じられないことが起こったことは彼女も理解しているが、レーヴェの言葉には頷けなかった。
 それでも自分の掌が熱くなったことも、何かが溢れるような感覚に襲われたのもロッテは自覚していた。それをレーヴェに素直に言うことは出来なかったが。
 じっと手を見つめても、今はなんの変化もない。自分の思い通りに何かができるわけでもなさそうな様子に、やはり何かの間違いだったのだとロッテは思うことにしようとしていた。
 聖女は妹であるアンネマリーだけ、そうでなければ……

 アンネマリーの自分の自分を見下すような瞳が、今も脳裏に焼き付いて離れない。もし自分まで聖女の力を顕現したのだとすれば、彼女がどんな反応をするのか考えるのが彼女はとても怖かった。


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