婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!


「おい、大丈夫か? 見たところ呪いは解けたようだが、術者に心当たりはあるのか。それともお前の依頼人が……?」

 ロッテが出て行った後、レーヴェは男に慎重に尋ねていく。男の命に別状はなさそうだが、まだ息は荒くショックを受けているのが見てとれたからだ。
 なんだかんだでレーヴェは冷酷になれないことが多い、命を狙われる立場でありながら彼の優しさは命取りになる可能性もあると言うのに。

「真っ黒なフードを被った中年の男だった……妙な気配と香りを纏っていて、ただ追放される公爵令嬢を殺して欲しいとだけ言われたんだ。それも破格の報酬で」
「……男だと?」

 どうやら報酬に釣られて依頼を受けただけらしく、詳しいことは分からないらしかった。レーヴェはてっきり別の人間が依頼をしたのだとばかり思っていたため、しばらく考え込んでいるようだった。

「レーヴェ、一つだけなんとか使えそうなベッドを見つけたわ。すぐに休めるよう準備したから、その人を運んでもらえる?」
「ああ、すまない。……おい、立てるか?」

 ふらつく男の肩を支えて、ロッテに部屋まで案内をしてもらいながら……レーヴェは彼女の後ろ姿をじっと見つめていた。
 これから、大きな変化がこの国に起こることを彼だけが確信しながら。


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