婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
深まる謎と聖女の証に
「……え? 今、何かおっしゃいましたか」
男の頭に乗せていたタオルを今一度冷やし直そうと、桶に手を伸ばしたロッテの後ろから声が聞こえてきた気がして彼女は思わず振り返る。
呪術の効果は解けたようだが、大量の血を吐いた身体は弱まりぐっすり眠っているとばかり思っていたのに。
「……その、悪かったな。依頼とはいえアンタを狙ったのに、逆に命を助けてもらう事になった。そのうえこうして看病までさせて」
「そう言われても、私は何もした覚えはありませんし……」
この男が言っているのはあの時の事だと分かっているのに、どうしてもロッテは素直にその言葉を受け入れられない。
自分ではなくレーヴェが何かしたのではないかと彼に聞いたが、あっさりと有り得ないと返された。ならば呪術が完全なものでなく、途中で効果が切れたのではないかとも聞いたがその可能性は低いと否定されてしまった。
人を一瞬で殺そうとするだけの呪いだ、このゼーフェリング王国にそんな呪術を使える人間が隠れて存在しているのだろうか?
呪術の使用や教育を固く禁止されているこの国で……
ロッテの背筋にまた冷たい感覚が襲う、もしそうなのだとしたら? 一瞬だけ浮かんだ考えを否定するように彼女は小さく頭を振った。