婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!

「アンネマリーは、あの子はそんなこと出来る子ではありません! レーヴェは彼女の事をよく知らないから……だからっ!」
「君の婚約者を奪って傷付いた姉をこんな辺境地に追いやり、その上で刺客を差し向けるような人間だ。君が思っているより聖女アンネマリーはずっと……」

 レーヴェが何を言いたいのかロッテが理解出来ない訳ではない、妹が自分を邪魔だと考え父や元婚約者のカールハインツに追放するように頼んだのかもしれないと考えたこともあったのだ。それでも……

「やめて! 聞きたくない、そんなはずはないの!」

 興奮のあまり普段出さないような大声を出し、混乱したままロッテは部屋から飛び出し廊下を走っていく。もし自分が父親に元婚約者であるカールハインツに、そして実の妹にも疎まれて存在を否定されているのであれば……その現実はあまりに酷く今のロッテには耐えられなかったから。
 追い掛けて来ないで欲しい、傷付いたロッテはそう思うのに。すぐにレーヴェは廊下を走る彼女の後をついていく、彼ならすぐにロッテを捕まえられるはずなのに何故か微妙な距離を空けたままで。

 ロッテは近くにあった部屋に入ると『バタンッ!!』っと大きな音をたて、その扉を閉めた。部屋の前まで近づくレーヴェの足音が聞こえるが、無理に扉を開けそうな気配は感じない。
 ここもずいぶん荒れた部屋だ、この屋敷には手入れされてない部屋が多く長時間を立て籠るのには向いていない。だからといってすぐに出ていく気持ちにもなれず、ロッテはその場で小さく座り込むしかなかった。
 レーヴェの話したことが全て違うとは思ってない、だがそれを認めれば自分は……そんな複雑な心境でどうしようもなくなっていた。辛い気持ちのままどれだけ時間が経っただろう? 扉の外から小さくクシュン、という音が聞こえてきた。
 今のはくしゃみだろうか。あれからずいぶん時間が過ぎたような気がするが、もしやまだ扉の向こうにレーヴェがいるのかとロッテは心配になる。


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