婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
そっと扉に耳を寄せるロッテも、すこし冷静になったためか寒さを感じ始めた。手入れのされていないボロボロの部屋に使えそうなものなどなく、ひんやりとした空気が体温を奪っていく。
しばらく聞き耳をたてていたが、レーヴェの様子に変化はなく扉から離れ毛布でも探そうとした瞬間「クシュッ……!」とロッテまでくしゃみをしてしまった。その音が聞こえたのだろう、扉の向こうからガタッ! と彼が動くような気配を感じロッテは慌てる。
「……ロッテ、出てきてくれ。このままでは君が風邪をひく」
「……」
そう言われても一度気まずくなってしまったためか、ロッテも素直に分かったと返事が出来ずにいる。
レーヴェの言葉に腹が立ったのも事実だ、だが彼もアンネマリーの姉であるロッテにいい加減なことを話すような人物ではないことも分かってはいた。ただ認めたくないだけだ、実の妹がそんなことをするはずがないと。
「さっきの事は俺が悪かった、君に無神経な発言をしたこともちゃんと謝る。だから……」
「レーヴェ……」
この国の貴族男性は滅多なことでは女性に頭を下げたりしない、侯爵家に生まれたロッテも父が誰かに謝る姿など見たことないほどだったのに。こうも簡単にレーヴェが謝罪の言葉を口にしたことに、逆に申し訳なさを感じてしまった。
例え彼が貴族ではなかったとしても、そこまでさせる気はなかったのに。
「止めて、レーヴェ。男性がそんなことくらいで謝るなんて……」
「いいや。間違った事をすれば男女関係なく謝る、他国ではこれが当然なことなんだ。それにロッテは家族を悪く言われたんだ、全然そんなことなんかじゃない」
根が真面目なレーヴェはこうだと思ったら、それを真っ直ぐに相手に伝えてくる。それに心揺さぶられないほどロッテはひねくれてもいない、結局彼女は扉の向こうに立つレーヴェのためにそのドアを開いてしまうのだった。