婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「良かった、出てきてくれて。このまま君が閉じ籠って風邪でもひいたらどうしようかと思った……」
いつのまに用意してきたのだろう? レーヴェは片手に持っていた毛布をロッテの冷えてしまった体にグルグルと巻き付けてくる。その様子がなんだか可愛く見えてしまって、ロッテは胸がくすぐったいような気持ちになった。
悪いのはレーヴェばかりではない、感情的になって飛び出してしまったロッテもなのに決して彼は彼女を責めたりしない。
「そういうレーヴェこそ、風邪をひいたらどうするの? この毛布だって、自分のために使えばいいのに」
「俺はそんなヤワじゃないし、女性の君に寒い思いをさせておいて自分だけ暖かな思いなんて出来るわけないだろう?」
当たり前のようにそう話すレーヴェに、ロッテは複雑な気持ちになる。今まで彼女がどんな状況でもその周りいた人間はそんな事は気にもとめはしなかった、それなのに出会ったばかりの彼は全く違うことを言うのだから。
彼の優しさが怖い、今まで我慢することばかりに慣れてそれで平気だったはずなのに。こんな人の暖かさに触れてしまえば、どんどん欲深くなってしまう気がして……
もし自分が聖女でなかったとしたらレーヴェはどうするのだろうか? 喜びと不安の混ざる複雑な胸中を悟られないよう、ロッテは困ったような笑みを浮かべることしか出来ない。
「部屋に戻ろう、まずは冷えた身体を暖めなければ。それと……さっきの事をちゃんと謝らせて欲しい」
「レーヴェ……ねえ、ひとつ教えて欲しいことがあるの。どうして貴方はそんなにこの国の状況や聖女である妹の事について知っているの? ただの傭兵だなんて、嘘なんでしょう」