婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
侯爵家の令嬢として育ってきたロッテには、彼が着ている服が上等な布で作られた物だということは分かっていた。持っている剣もそこらの傭兵が使うような手頃なものではなく、王国騎士団の兵が装備しているような品物だ。ただ、剣の紋章らしきものが酷く傷つけられているのでロッテはあえて気づかないふりをしていたのだが……
しかもそれを聞いてはいけない雰囲気がレーヴェにはあった。だからこそずっと黙っていたが、これから先二人で協力し合うと言うのなら話は別だ。信頼できる相手でなければ、自分の未来を簡単にまかせることなど出来るはずもないのだから。
「……そうだな。ロッテはそこら辺の綺麗なだけの令嬢とは違う、俺がどんな話をしても冷静に受け止めてくれるだろう。だがもう少しだけ待ってくれないか?」
「私が待つことで何かが変わるの?」
レーヴェに話す覚悟が出来ているのなら、今でも構わないはずだ。それなのに彼が待てと言うのなら、きっと何か理由があるはずだとロッテは考えた。無理に聞き出そうとまでは思っていなかった彼女だったが、真剣な様子のレーヴェを見てやはり彼が信頼できる人間だと確信していた。
「ああ、聖女である君を危険な目に遭わせないために必要な事だと俺は思っている。俺はロッテに嘘をつくつもりはない、話せるようになったら必ず俺の全てを教えるから」
「そう、レーヴェがそう言うのならそれを信じるわ」
自分のためだと言われれば、ロッテはそれ以上わがままを言えるような性格ではない。いくら聖女になるための教育を受けて来たとはいえ、この先……彼女がレーヴェの足手纏いになる事は目に見えているのだ。
いつか話してくれると言うのならば、ロッテはそれを待つしかないだろう。