婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「さあ、部屋に戻ろう。あの男を一人にしておくわけにもいけない、また命を狙ってくるかもしれないしな」
レーヴェはそういうが、ロッテにはそれが自分を部屋に連れ戻す口実だという事ことくらい分かっていた。あの男性が実力の差のあるレーヴェにこれ以上何かすることはないだろう。ロッテに素直に謝っていた姿も、嘘ではないはずだ。
チラリとロッテが彼を見上げれば、レーヴェは少しバツの悪そうな表情を見せたあと彼女から顔を背けた。それでもロッテから見える彼の耳が少し赤く染まっている。
可愛いところもある人ね、と思ったあとでロッテは小さく首を振った。彼女が男性のことを可愛いなどと思ったことは初めてで、なんだか胸の奥がくすぐったかったのを誤魔化したかったのかもしれない。
「……笑うな」
「笑ってなんか……ないわよ?」
どうやらロッテの考えていたことが表情に出ていたようだ。レーヴェは少しむすっとした表情で彼女にあたるが、それすらもますます可愛く見えてロッテは笑いを堪えるので精一杯になる。
無表情を装うのは得意だったはずなのに、どうしてだろうか? レーヴェといるとロッテは素直な感情を隠すことができなくなっているようだった。
「レーヴェは不思議な人ね、最初は怖いと思ったのに全然違うんだもの」
「俺は君の方が不思議だけどな、侯爵令嬢なのに全然らしくない。もちろん、いい意味で……だけど」
侯爵令嬢として育てられたのは事実だが、らしくないとはどう言うことなのか? それを問いただしたかったが、そのままレーヴェに手を取られロッテは部屋へと連れ戻されたのだった。