婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「どうしてレーヴェは私が聖女だと信じて疑わないの? たった一度だけ、それも私があの男性を助けたなんて貴方の勘違いかもしれないのよ。それなのに……」
まだ自分が聖女だとは思えないロッテは、彼女が聖女だと確信しているレーヴェにそう尋ねた。今でも鮮明に思い出す、アンネマリーが聖女の力を開花させた瞬間。それはあまりに自分の時とは違っていたためかもしれない。
あの甘い香りも、クラクラと酔わされるような酩酊感も……春の暖かな風が吹いたような自分の時とは差がありすぎた。
「ロッテ。俺は君があの男を治癒する瞬間を見てなかったとしても、いずれ君が聖女で間違いないと考えたと思う。例えその不思議な力がなくても、ロッテは聖女になるべくして生まれ育った人だと確信している」
「聖女になるべくして……?」
今までそばに居てくれた人、父や母の代わりに大事に育ててくれた乳母の期待も裏切ってしまった罪悪感でロッテはずっと苦しんでいた。聖女でない、そんな自分の存在に価値が見出せなくて。
それなのにレーヴェは知り合ったばかりのロッテが誰より望んでいた言葉をくれる。辛かった聖女になるための教育も、そうでないと分かってからの周りの冷たくなっていく視線も。そんなものが全てどうでも良くなるくらい、ロッテはその一言が嬉しかった。
「俺は聖女に望まれるべきなのは、その特別な力だけではないと考えている。思いやりや優しさ、時には厳しさも……どれだけ力があっても、そんな慈悲の心のない女性にこの国が救えるとは思えない」