婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「その話はまた今度な、これから馬に乗って移動しなくてはいけない。長時間は辛いだろうが、出来るだけ頑張ってほしい」
「分かったわ。よろしくね、えっと……」
チラッとロッテがレーヴェに視線を移す、この馬の名前を知りたいのだろう。きっとレーヴェならばこの馬に名前をつけて可愛がってるはずだと、彼女には分かってしまったようで。
「……ヤックル、だ」
「ふふ。よろしくね、ヤックル」
ロッテが名を呼んで手を伸ばせば、ヤックルは嬉しそうに鼻を鳴らして擦り寄ってくる。普段はレーヴェにしか懐かない、そんな暴れ馬も彼女の前では子馬のように甘えた様子を見せている。
もしここに連れてきたのがアンネマリーだったとしたら、きっとこうはならないだろう。ロッテだからこそ、ヤックルはその心を開いて見せているのだ。
「ロッテ、君は馬に乗ったことは?」
「ごめんなさい、あまり……子供の頃にお父様に少し乗せてもらったくらいしかなくて」
申し訳なさそうにロッテはそう話すが、レーヴェにはそれも想定内である。そんな彼女を優しく馬に乗せると、レーヴェも跨りロッテにその細い腕を自分の腰に回すように言った。
男性と密着したことなどほとんどないロッテは戸惑い緩く腕を回したが、それではかえって危険だとレーヴェに注意されてしまう。結局、何だかんだとしっかりと彼の筋肉質な身体にしがみつくようにくっつくまで納得してもらえなかった。