婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!


 そう言われてロッテがヤックルを見れば、レーヴェの隣で心配そうに彼女を見つめているではないか。ずっと二人を乗せて走ってきて疲れているはずなのに、ヤックルは休もうともせずずっとロッテの傍から離れなかったのだ。
 
「私はいいのよ。ヤックル、貴方も今のうちに休んでちょうだい?」

 そうロッテが言っても、ヤックルは黙ってその場から動こうとはしない。レーヴェはその様子を眺め眺めながら「ほらな」と言うように肩をすくめて見せるだけだ。どうやらロッテの体調が良くなるまで、レーヴェとヤックルだけで休んでもらうのは無理そうである。
 どこまでも優しい一人と一頭に、ロッテはどうしていいのか分からなくなる。冷たくされることに慣れてしまった彼女に。それが当然だと言わんばかりの彼ら行動が嬉しすぎて。

「……ごめんなさい、迷惑ばかりかけて。でも、ありがとう」

 申し訳ない気持ちはあるが、それでもきっとレーヴェたちはロッテに謝ってほしいわけではないはず。そう思った彼女は素直に感謝の気持ちを口にした。
 とても悪かった体調も、あっという間に良くなっていく気がする。もう大丈夫だと言ってももう少し休んだ方がいいと何度も止めるレーヴェを説得し、ヤックルに水を飲ませるため近くの川へと移動した。


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