婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「少し落ち着いたら食べてくれないか。王都までまだ距離がある、あまり美味しいとは言えないが空腹のままよりはマシだろう」
保存食であろう固めのパンに干し肉とチーズを挟んだものを手渡され、ロッテは目を輝かせた。子供の頃から好んで読んでいた物語に出てくるような食べ物に感激したようで、そんな彼女の様子を見てレーヴェは笑いをこらえるの必死だ。
侯爵家の令嬢なら普通は見向きもしないような食事なのに、ロッテは頬を染めて喜んでくれる。そんな所も好ましいとレーヴェは思っていた。
「そんな顔して……君が想像しているほど美味しい物ではないと思うがな」
「そうなの? でもこうしてレーヴェとヤックルと一緒に食べれるんだからきっと美味しく感じると思うわ」
ロッテは素直な気持ちを伝えただけだったが、レーヴェにとっては驚きだった。今までいろんな令嬢の相手をする機会はあったが、彼女のような女性は初めてで。家柄が良いだけの高飛車で我儘な娘たち、何度も擦り寄られてウンザリしていたのに……
こうして一緒に食事をするだけで喜んでくれるロッテに、じわじわとレーヴェの胸が熱くなる。
「君といると調子が狂うな、本当に」
「どういうこと?」
「さあな、俺にもよく分からない。さっさ食べよう、のんびりしている時間が惜しい」
首を傾げるロッテを急かして、レーヴェも固いパンに齧り付いた。ジッと彼を見つめる、そんなロッテの視線に落ち着かない気がしてそうすることで誤魔化した。