婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「ここだ、先にヤックルを休まてくるからロッテは中で待っていてくれ」
「分かったわ。ヤックル、ゆっくり休んでね」
宿から少し離れた場所にある小さな馬小屋へ歩いていくレーヴェとヤックルをしばらく見た後、ロッテはガタついた宿の扉を開けた。
「いらっしゃい! ……あら、お嬢さんお一人かしら?」
「あ、いえ。すぐに連れの男性が来ると思います」
旅用の衣類を着ているとはいえ、ロッテが貴族の令嬢だということは何となく伝わったのだろう。声をかけてきた中年の女性は少し戸惑ったような表情をしていた。
王都から離れたこんな町に一人で貴族の女性がやってくれば間違いなく訳ありである、それを心配したのかもしれない。
「そう、ならいいのだけど。ここは安い宿だし、貴女のようなお嬢さんには窮屈かもしれないのだけど……」
「いえ、私は毛布さえあればどこででも休めるので大丈夫です!」
確かに貴族の令嬢ではあるが、今は我儘を言えるような立場でもない。レーヴェが気を使って野宿は避けてくれたのだし、十分過ぎると思っているくらいだった。
「なら問題ないかしらね、連れの方が来るまでそこで座って待ってるといいわ」
「はい、ありがとうございます」
そう宿の女性に言われ、ロッテは端に置かれた椅子の一つに腰かけレーヴェを待つことにした。