婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
辺境の町の宿屋だが旅をするものが多いのか、女性は忙しそうにあっちこっちへと動き回っている。
確かに今までのロッテならば泊まることもなかった施設だが、どこかアットホームで暖かい雰囲気に彼女は少し安心出来たようで。慣れない旅の疲れもあってか、座り心地の良い椅子でついうつらうつらとし始めてしまった。
「あら、まあ。このままじゃこのお嬢さんが風邪ひいちゃうよ、どうしよう?」
「……ああ、彼女は俺のツレなんだ。すまなかった、俺が部屋まで運ぶから」
いつの間にか熟睡してしまったロッテを見つけた女性が慌てていると、横からレーヴェが眠っている彼女をそっと抱き抱える。大切なものを扱うようなその動きに、それを眺めていた女性がニンマリと笑って見せる。
「まあ、そうなのかい? アンタが女の子を連れてくるなんて初めてじゃないか、ふふふ」
「誤解のないように言っておくけれど、彼女はそういうんじゃないからな?」
きっと宿の女性はロッテがレーヴェの恋人か何かだと思っているに違いない。それを視線で感じた彼は念の為、しっかりとそうじゃないと言ったつもりだったのだが。
「はいはいそうなのね〜、分かったわよ。……うふふ、ああ若いって良いわあ!」
「……全然分かってないじゃないか」
まるで自分が恋でもしているようにはしゃぐ女性を見て、脱力するレーヴェの腕ですやすやと眠るロッテ。その安らかな寝顔を見て、まあ良いかと思い直しレーヴェは部屋へと向かって歩き出した。