婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
王都までの主要道路や町で検問されてるとすれば、レーヴェとロッテが王都に入るのは難しいかもしれない。早めに行動したつもりだったが、どうやらそれもアンネマリーには予想の範囲内だったという事だろう。
地図に付けてある赤い印は王都に潜り込める可能性のある抜け道だが、検問が行われない分だけ険しく侯爵令嬢のロッテには辛い移動になるに違いない。レーヴェはちらりと眠っている彼女に視線を向けて、小さく息を吐く。
無理をさせたくはないが、こうするのが一番確実に王都に入る方法になるだろう。検問が行われ自分達が見つかれば捕まるかもしれない、そう話せばロッテは迷わず厳しい道を選ぶに違いない。
レーヴェだってロッテが王都に着いてもらわなければ困る、それは頭で分かっているのだが……
「ひどい山道ばかりなうえに野獣の出る可能性もなくない、ヤックルも使えないとなるとロッテには負担が大きすぎる。参ったな」
レーヴェの頭の中ではさっきから同じことばかりが堂々巡りしている。頭ではそうするしか選択肢がないと分かっているのに、感情の部分がついてこない。こんな事、いままで一度だってなかったのに。
特殊な環境で育てられたレーヴェは、子供の頃から周りの大人よりもずっと冷静に物事を分析して行動できる人物だった。そこに感情を含めば計算が狂うと、ずっとそう信じていたしそれで困ったことも無かった。
なのに、今この状況で何故――――
「……レーヴェ? そこで何を、しているの?」
「ロッテ、目が覚めたのか」
考え事に集中していたレーヴェが、小さなロッテの声で我に返る。そのまま椅子から立ち上がると、彼女が休んでいるベッドにゆっくりと近づいた。