婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
それは本当に突然だった。私とカールの結婚が近づくにつれ部屋に篭りがちになっていたアンネマリーが、不思議なオーラを纏うようにして急に現れ美しく微笑んで見せたのだから。
昔から聖女は不思議な力を持ち、その国を正しく導き栄えさせる存在だと言われている。そんなアンネマリーの能力はすぐに広まり、聖女の誕生だと大騒ぎになった。
力を顕現させたアンネマリーと何も出来ない私では、段々と周りの見る目が変わっていくのが分かった。父も祖父母も妹に過保護になり、どこにでも連れて行くようになる。
そうすれば聖女であるアンネマリーの加護を受けるため人が集まって、彼女の存在を讃えるのだから。その内に力のない私は居てはいけない存在のように扱われるようになり、ひっそり屋敷の中で隠されるように暮らすようになった。
誰もかれもがアンネマリーの味方で、いつの間にか私の周りには誰もいなくなって……
「でも、それも聖女の力なのよね」
彼女が力を使う時は決まって甘い匂いがする。そうすると数分もしないうちにアンネマリーがふわりと現れ、その聖女の力を使ってみせるのだ。
暖かな春の日の中で癒されるような、それでいて満たされる感覚。あれが昔から伝わる癒しの力というものなのかもしれない。
自分の手をじっと見つめても、何も起こらない。アンネマリーは力が溢れてくると言っていたがそれがどういうものかも分からない。