婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「本当に? ちゃんとお腹いっぱい食べたの?」
「ああ、俺だってこの先が長旅になると分かっていて食事を抜くほど馬鹿じゃない」
レーヴェの言うことももっともだ。体力勝負な旅になると話したばかりだし、彼はすでに風呂も済ませているように見えた。
そういえば自分は汗をかいて汚れたままだと、ロッテは何となく一歩レーヴェから距離を取ってしまう。そんなロッテの行動を不満に思ったのか、彼は……
「何で俺から距離を取る? そうあからさまだと逆に気になるんだが」
「ち、違うの。もしかして私、臭うんじゃないかと思って」
顔を赤くして必死でそう伝えてくるロッテに、レーヴェは呆れたように「下に風呂がある、食事のついでに済ませてくるといい」というだけで。
ぶっきらぼうなその様子に不安になったロッテが、慌てて謝ると彼は……
「ロッテが悪いんじゃない、そこまで気が回らなかった自分に苛立っただけで」
そう言ってバツが悪そうに跳ねた赤髪をクシャクシャと搔き乱す、その姿が少年のようで何となく可愛くもあるのだが。
「レーヴェは悪くないわ、私が玄関で眠ったりしなければ」
「……はいはいはい、いいから早く風呂と食事を済ませてこいよ」
予想通りお互いが自分が悪いと謝る状況に、これでは埒が明かないと思ったレーヴェは着替えを持たせてロッテを部屋から追い出したのだった。