婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!


「本気であの山を越えるのかい? そんなことしなくてももう少し待てば検問も終わるかもしれないのに、あの子を連れてなんて危険じゃないか」
「残念ながらそうもゆっくりしてられないんだ、ロッテを連れてまた来るよ」

 華奢なロッテを心配する女将にそう挨拶すると、レーヴェは支払いを済ませて頼んでいた昼食用のバスケットを受け取った。この先きちんと食事がとれるのがいつになるかもわからない、そんな旅が始まるのだとロッテも少し緊張していた。

「本当に、どうしてこんな時期に検問なんて……王宮がすることはアタシ達にはよく分からないね」
「そうだな、王宮の人達にはもっと優先してやらなくてはならないことがあるはずなのに」

 それはこの国の状況を全て見てきたレーヴェだからこそ分かること、恵まれた王都にいただけでは気付けなかった厳しい現実。
 聖女の加護が届きにくい離れた場所ほど、潤っている王都とは大きな差があるのだと思い知らされた。それだけではない、徐々に美しかった水は濁り木々は腐り始めているという話も聞いた。
 アンネマリーが聖女の務めとされる神殿での祈りを捧げようとしないのも理由の一つなのかもしれない。ロッテの心は複雑だったが、このまま見過ごすことも出来ない。

「この国はどうなっていくんだろうね? 聖女様の加護もだんだん弱まっているみたいだとみんな言ってるよ」
「……ああ、そうなのかもしれない」

 レーヴェには分かっている。アンネマリーが偽の聖女を続ける以上、この国は腐敗していく未来しかない。だからこそ真の聖女であるロッテの力が必要なのだ。この国のためにも、そしてレーヴェ自身のためにも。


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